zillagodのブログ

国内旅日記 ~自転車旅・登山・徒歩旅行~

雌阿寒岳 登山のトラブルは自己責任で

雌阿寒岳

 雌阿寒岳は、標高1499メートルの活火山である。今でも山頂では噴気が吹き出ている箇所があり、噴火警戒レベルが上がると入山が規制される。雌阿寒岳の他にも、すぐ南の阿寒富士や、東側の雄阿寒岳といった「阿寒」を有する山が存在する。これら火山はある一つの火山の外輪山であり、阿寒湖はそのカルデラ湖である。約15万〜20万年前に大規模な噴火があったという。

 雌阿寒岳の登山ルートは主に3つある。西のオンネトーから登るのが最も一般的であるが、今回は東の阿寒湖側から登る。阿寒湖の標高は420メートルであるから、約1000メートル登ることになる。

 

樹木帯から森林限界へ

 登山道は、国道240号線から林道に入り、しばらく歩いたところから始まる。鬱蒼とした森の中を歩くわけだが、北海道の山中で気を付けねばならないのが、ヒグマだ。本州のツキノワグマよりも体躯は大きく、襲われれば致命傷である。熊は臆病な性格であり音に敏感である。対策として熊鈴に加えてラジオを流しながら進んだ。

 登山道の入り口には一時間ほどで着いた。ここまでは車でも来られるだろうが、一台も見なかった。登山道は笹が繁り、踏み跡が判別できないところもある。どうやら思っていたより、ずっとマイナーなルートであるらしい。雨は降っていないが、生い茂る草に付く朝露のため、雨具を着用しなければならなかった。

 しかし、このような状況は長くは続かなかった。本州よりも高緯度であるため、森林限界が低いのである。すぐに背の低いハイマツ帯になり、やがてそれすらもなくなる。標高1000メートル頃からだったと思うが、周囲は火山特有の荒涼とした風景になっていた。

 

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雌阿寒岳 森林限界付近

山頂の噴火口

 山頂まで他の登山者には会わなかった。山頂には4、5人のグループがいたが、オンネトーから登ってきたという。聞けばそのルートには他にも登山者が大勢いたという。やはり西側からのルートがメジャーのようだ。

 さて、この日も例に漏れず、濃い霧におおわれていた。晴れていれば山頂から阿寒湖を眺望できるはずだが、一面真っ白である。霧の向こうからは噴気の吹き出るゴーという音が響くだけだ。時刻は午前11時。身体も冷えてきたので、下山することにした。

 下山路は西側に向かった。麓の野中温泉に出るルートである。下山を始めた直後、一瞬だけ霧が晴れた。登ってくる登山者の、「おおっ」という感嘆の声が聞こえた。山頂の方向に振り返ると、ごつごつした岩場の火口が見えた。熱そうな水蒸気が噴出しており、現在進行形で火山活動が続いていることを実感した。その様子は、まるで生きているようだった。

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雌阿寒岳 噴火口

トラブル

 下り始めてすぐに足元の異変に気が付いた。登山靴の靴底が、踵から剥がれ始めていた。随分長いこと使っていたので、加水分解が相当進んでいたのだろう。実は、古い靴だということは、出発前に認識していたのだが、大丈夫だろうとたかをくくっていた。しかし、いざこうしてトラブルに遭遇し、自分の準備の甘さを反省せざるを得ない。山のトラブルは、基本的に全て自身で解決しなければならない。まだ致命的ではないと判断し、急ぎつつも慎重に歩を進めた。

 下山には2時間かからなかった。野中温泉に着いた頃には、両足とも靴底が半分ほど剥がれていた。もうこの靴で山には入れない。計画の大幅な変更を余儀なくされた。斜里岳と羅臼岳は諦めざるを得なかった。

 このときは結局、網走へ降り、オホーツク海岸を斜里まで進んだ。しかし、目的を見失っており、メリハリのない旅路になった。天気は良くなったので、登る予定だった斜里岳がくっきりと眺望できた。それとは対照的に、モヤモヤした気分のうちに、この年の旅は終わった。