石北峠
2004年8月17日、遠軽を発ち内陸に進んだ。国道242号線を行き、留辺蘂からは国道39号線に入った。この道は旭川まで続いており、この日は層雲峡まで行く予定である。 途中には、標高1050メートルの石北峠がある。地図で見ると、地形は険しそうで、峠道も曲がりくねっている。このため、ハードなヒルクライムを想像していた。しかし、実際はそうではなく、終始だらだらした登りであった。 殺風景な峠を登りきり、しばらく下ると、長いトンネルが見えてくる。トンネルの全長は4キロメートルを超えている。自転車でトンネルを通行するのは、非常に神経を使う。十分に幅がある歩道があればそこに入るが、そうでない場合は車道を行くほかない。ほとんどのトンネルでは、路肩は狭く、車がすれすれに追い越していく場合もある。前照灯と尾灯を点灯し、なるべく、一定のラインを注意深く走ることしかできない。
大雪湖
長いトンネルを抜けてしばらく行くと、大雪湖にたどり着く。大雪湖はダム湖であり、これまで見てきた、雄大で開放的な湖とは雰囲気が違う。波も立てずに、山奥で静かに佇んでいて、どこか神秘的だ。
層雲峡 断崖絶壁の峡谷
層雲峡は、大雪湖から国道39号線を10キロメートル程、北上したところにある。国道39号線は石狩川と並行しており、層雲峡は石狩川の流れに削られた峡谷である。両岸に、高さ200メートルの柱状節理からなる断崖絶壁が展開している。この峡谷の元は、約3万年前の大雪山の噴火で噴出した溶岩が固まったものであるという。付近には温泉も湧き出ていて、温泉街を成している。
「大雪山」というワードがここで初めて登場するが、言わずと知れた北海道最高峰の山である。大雪山という山があるわけではなく、最高峰の旭岳と周辺の山々を総称した呼び名である。この山々を、私は2016年に登っている。そのときのことは、いずれ書くつもりだ。
大雪湖以降は国道39号線ではなく、川に沿っている自転車道を進んだ。この自転車道は層雲峡まで直接繋がっているらしい。しかし、残念なことに、途中で土砂崩れのため通行止めの看板が現れた。しかも、看板には層雲峡の遊歩道も通行できないことも書いてあった。看板の前には、私と同じような自転車旅行者がいて、私と同じように落胆していた。
しかたがないので、国道に戻った。層雲峡の大部分は見ることが出来なくとも、駐車場から近い場所にある、「銀河の滝」と「流星の滝」は見ることができるらしい。そして、日も傾き始める時間帯であったので、層雲峡の近くにあるキャンプ場以外に、行く場所はなかった。
「銀河の滝」と「流星の滝」は、2つの水筋が同じ岩山から落ちる。国道脇の展望所から見ると、向かって左側が銀河の滝で、右側が流星の滝である。銀河の滝は、細く繊細な白糸で、流星の滝は一気に水が落ちる太い滝となっており、対称的である。この見た目のため「女滝・男滝」とも呼ばれている。
遊歩道が通行止めなので、層雲峡はここしか見るところがなかったのだが、ここだけでも見る価値は十分にあった。川岸にずっと続く断崖絶壁も、一部ながらその広大さを感じ取ることができたし、夕日をバックにした絶壁は素晴らしいの一言だった。断崖のバックに夕焼けと星空が同時に広がっていた。絵に描いたような光景だった。こんな幻想的な光景が、現実にあるのかと感嘆した。