zillagodのブログ

国内旅日記 ~自転車旅・登山・徒歩旅行~

三国峠から帯広 めくるめく風景

 

三国峠

 2004年8月18日。層雲峡からいったん大雪湖に戻り、国道273号線に入る。この日は帯広まで行く予定だ。

 道中の最初は、三国峠越えから始まる。山深い森の中の道をひたすら登って行く。大雪湖側の勾配はきつくなく、終始だらだらした上りだったと記憶している。ただし、距離が長い。足にも疲労がずいぶん溜まっていたため、かなり苦労した。

 峠の頂上からみた十勝側の展望は素晴らしい。一面の森が広がる中を、一本の道路が突き抜けるように進んでいく。高架になっているところもあり、森から浮かび上がって見える箇所もある。ここにはレストハウスがあり、長めに休憩を取った。

 

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三国峠からの光景

 

 想像した通り、下り坂は爽快だった。高架になっているところは、まるで空を滑空しているかのように錯覚する。 

タウシュベツ川橋梁 風化の進む遺物

 長い下り坂を音更川に沿って行くと、やがて糠平湖に着く。ここも大雪湖同様のダム湖である。この糠平湖には、是非訪れることを奨めたい場所がある。「タウシュベツ川橋梁」というところで、国道273号線を北から行った場合、糠平湖の少し手前で、湖の左岸につながる道に入った先にある。砂利道の林道だが良く締まっている。ロードバイクではきついかも知れないが、太めのタイヤを履けば、行けないことはないだろう。5キロメートルほど進むと、湖に面した浜に出る。ここから、複数のアーチから成る大きな橋梁が見える。ただの橋ではない。古代ローマの水道橋を思わせる形で、長い間、風雪に耐え、その姿はボロボロになっている。日本でここまで浸食が進んでいる構造物が他にあるだろうか。
 この橋梁には、かつて鉄道が通っていた。帯広から十勝平野を北上し、十勝三股までを繋いでいた士幌線である。1939年に開通し、このときまだ糠平湖はなかった。ちなみに、十勝三股駅跡は、三国峠を下ってくる途中にある。1955年に糠平湖ダムが造られ、周辺が湖底に沈むことになり、士幌線はルートを変えた。そのとき、この橋梁だけが残ったのである。それから今日まで、風雨雪に耐えているのである。

カラッとした晴天の気候も相まって、何だか日本にいるという気がしない。まるでヨーロッパで見るような光景である。

 

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タウシュベツ川橋梁

 写真は2007年のものだが、上士幌町webサイトを見ると、現在ではさらに浸食が進んでいるようだ。おそらく遠くない将来に、崩壊するのではと思う。
 なお2009年より、この場所に行くためには許可が必要になったらしい。詳細は、上士幌町webサイトに記載されている。

帯広への

 糠平湖を過ぎて、国道273号線をさらに進む。小さなアップダウンを越えると、もう十勝平野である。広大な畑や牧場が一面に広がる。山岳地帯を這うようにうねっていた道も、まっすぐの直線になる。天気は晴れ。気持ちの良い風景だ。帯広まではもうすぐである。
 帯広は十勝平野のほぼ中心に位置し、根室本線が通り、空港も近い。これまで通過した街のなかでは最も発展している。しかし、市街地をひとたび抜けると、一面の畑が広がっている。

 それにしても、この日は山岳から湖、広大な平野、そして帯広市街と、風景がダイナミックに変わっていった。自転車の旅の魅力の1つは、このようなダイナミックに変わっていく風景を、ガラス越しではなく、直接空気に触れながら感じられることである。

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帯広駅(2019年撮影)

  帯広には3度訪れたことがある。
 1回目は2004年に糠平湖方面から南下したとき、2回目は2007年に襟裳岬方面から北上したとき、そして、3回目は2019年の旅の出発点が帯広だった。
 私は、2007年まで、大学のサイクリングサークルに所属していた。2004年と2007年の旅は、このサークルでの行事も兼ねている。毎年異なるルートで、キャンプツーリングするのだが、両年とも帯広が集合地だった。そして社会人になり、2019年に転職を経験した。その際、ある程度まとまった時間ができたので、北海道の旅に出た。このとき、この地に移住した友人を訪ねた。東京で会社員をしていたが、学生のときに訪れた北海道の素晴らしさが忘れられず、移住を決意したという。


 2004年に帯広に訪れたのは、8月18日。北海道を自転車で走り始めてから10日が経っていた。