台風襲来
2004年8月18日、帯広市街に昼過ぎに到着した。ここで、サイクリングサークルの仲間と合流する。それまで知らなかったのだが、どうやら台風が接近しているらしい。宿泊はキャンプや野宿だったので、携帯電話のバッテリーを節約するために、ニュースや天気予報はあまり見ていなかった。
中学生の頃は「北海道に台風は来ない」などと教えられてきたが、近年明らかに覆っているように感じる。異常気象の1つなのか、長い地球の歴史の中でのささいな変化なのかは、私には分からない。
などと思いに耽り、気象庁のホームページで確認したのだが、北海道に上陸した台風の年毎の数を見ても、増えてきているとは言いがたい。毎年、数回はコンスタントに上陸しているようだ。ただし、勢力に違いがあり、近年は勢力を保ったまま来ることが多いようだ。なので、増えてきていると錯覚したのだろう。
台風は、明日本格的に接近する。それにともない、夜から強い雨が降るという。この日は、上士幌航空公園のキャンプ場に泊まる予定であったが、そこの人のご厚意で、近くの集会所に泊めてもらった。
翌8月19日、予報通り、夜中から強い雨が降っていた。この日はほとんど走っていない。泊めさせてもらった集会所でじっとしていた。
午後になって、雨風は幾分か和らいでいた。テレビでも峠を越したと言っている。
夕方、雨はあがり、昨日泊まる予定だった上士幌航空公園へと向かった。ここは開けた土地の開放感溢れるキャンプ場で、台風一過の夕日が見事だった。
翌日8月20日は、一日遅れの予定を取り戻すべくルートをショートカットした。鹿追町まで国号274号線を走り、そこから国道38号線を新得まで行った。新得から富良野方面に向かうのだが、途中には、標高644メートルの狩勝峠がある。8月20日は、峠の登りの途中にある、狩勝高原キャンプ場に泊まった。
狩勝峠の記憶
狩勝峠には2度登っている。一度目は2004年で、二度目は2019年だ。2004年は大学のサークル仲間と走ったが、2019年は1人だった。
私は1人で旅をすることが多い。寂しくないのかと良く聞かれるが、そのように思ったことはない。多人数での旅に良いところがあるように、1人旅にも良いところはある。多人数での旅のよいところは言うまでもないだろう。気の合う友との旅は楽しい。だが、その楽しさが仇になることもある。2004年に登ったはずの狩勝峠だが、峠とその前後の光景はほとんど記憶になかった。ここだけではない。仲間と走った場所の記憶は薄く、逆に、1人で走った場所の記憶は鮮明に覚えていることが多い。1人旅では、すべての行動を自分一人で決める。行動中に見る風景や体験も自分だけのものだ。だから、簡単には忘れない。
さて、狩勝峠だが、再び訪れた2019年4月、道を進むに連れて、かつての記憶がどんどん呼び覚まされていった。見覚えのある道路、看板、建物。間違いなく2004年にここを通っている。だが、かつて仲間と走った道にいるのは、今は自分1人である。風景はさほど変わりないのに、自分だけが取り残されているようだ。このとき初めて、1人旅で「寂しい」と感じたのかも知れない。