二度寝の朝
2019年8月14日、旅の最終日、上高地までの行程を残すのみである。まず、横尾から明神まで「奥上高地自然探勝道」を歩く。そして、明神から上高地まで「上高地自然探勝路」を行く。上高地からはバスに乗り、帰宅をする。
上高地までは3時間程で着く。昨日までのようなハードな道のりではない。時間に余裕があることもあり、二度寝をした。自然の中でする二度寝ほど気持ちの良いものはない。天気は曇り。時折晴れ間がのぞき、曇天というほどではない。日差しは和らぎ、身体に心地よい。
午前6時30分、重い腰を上げ、だらだらと出発の準備をする。横尾山荘の前には、山岳救助隊の隊員が、これから入山する登山者に、明日接近するという台風について注意喚起をしていた。
奥上高地自然探勝道・上高地自然探勝路
横尾から上高地までは、アップダウンはほぼないに等しい。梓川沿いの遊歩道に沿って行けば良いだけだ。横尾から明神までは、砂利道をひたすら歩く。時折、木々の間から穂高の山肌が見える。
途中、「徳澤園」という山荘がある。洒落たカフェやキャンプ場も併設されており、多くの登山者や観光客で賑わっている。ここで、久しぶりに水洗トイレを見た。だんだん文明の利器が増えてくる。旅の終わりは近い。
遊歩道は歩きやすく、山の上にいるような神経は使わない。ここで、分かったことがある。出発する前、「山の風景でも眺めながら考え事をしよう」などと思っていたが、それは非常に難しい。今回、高山病や熱中症で余裕がなかったということもあったが、雄大な風景を前に、ずっと気分が高揚していた。考えてみれば当然である。そんな状態で考え事などできるはずがない。
一方、この奥上高地自然探勝道と上高地自然探勝路は、考え事には最適であった。のほほんと歩いていれば目的地に達する。周りは静かで、鳥のさえずりや川の音が気持ちを落ち着かせる。ただ、時間が短すぎた。結局、考え事の答えには至っていない。そんなこんなで午前10時前に上高地の河童橋に着いた。観光客が大勢いる。上高地には初めて来たのだが、まさしく「高原のリゾート」といった雰囲気の趣があった。
上高地アルペンホテル
午前10時10分、外来入浴ができる「上高地アルペンホテル」を訪れた。ところが、外来入浴は10時30分までで、受付は10時までであるという。3日ぶりの入浴である。汗だくの身体は相当に不快である。引き下がるという選択肢は、ない。無理を通して頂いて、入浴させてもらった。時間は短かったが、汗と汚れと疲れが一気に吹き飛んだ。
結び
今回の山行は、とにかく高山病・熱中症に苦しんだ。これらの症状である頭痛はもちろんだが、このとき、余計に体力を消耗していたのだろう。頭痛が収まった後も、足腰が非常に重かった。途中何度も「もう登山はやりたくない」と思った。しかし、不思議なことに旅を終えた今、そんなことは微塵も思わない。次の旅の事を考え始めている。これだから旅も登山もやめられない。