zillagodのブログ

国内旅日記 ~自転車旅・登山・徒歩旅行~

大雪山~トムラウシ縦走登山④ 最高の山行の締めくくり

モルゲンロート

 2016813日、ヒサゴ沼の夜明けは綺麗だった。沼の周囲の山々を、朝日が赤く照らしている。見事なモルゲンロートであった。縦走3日目も天候に恵まれた。この日いよいよトムラウシに登頂し、この日で縦走は終わる。最終日の朝にはいつも複雑な気分になる。名残惜しい気持ちと、早く下山して風呂に浸かりゆっくりしたいという気持ちが五分五分になるのだ。

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モルゲンロート

トムラウシまでの道

 ヒサゴ沼からまず山脈の稜線上に登る。登り道には雪渓が残っていた。8月とはいえ、早朝だと雪面は締まっていて、滑りやすい箇所もある。キックステップを確実にして登れば大丈夫だが、なかには、軽アイゼンを使用している登山者もいた。

 稜線上は昨日までの雄大な景色とは一変して岩だらけの岩稜帯である。しばらく進むと、沼が点在し、巨岩に覆われた場所に出る。ここは、「日本庭園」と呼ばれるが、よく言ったものだ。確かに和式の庭園に見える。昨日までの広く雄大な風景とは一変して、比較的狭い領域に情報が密集する風景が続く。

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日本庭園

トムラウシ 岩と緑の王冠

 トムラウシは、岩場が多い。大雪山とは少々趣の異なる山だ。遠くから見たトムラウシの山頂は「王冠」に見えるが、その正体はこの岩稜である。

 ここでも先の遭難事故のことを考えてしまう。岩は濡れると極端に滑りやすくなる。また、ペンキなどで目印がない限り、明確に道があるわけではない。降雨時、わずかな踏み跡は消え、さらに霧などで視界に制限が出ることもある。これによって、道迷いのリスクは格段に上がる。このとき必要な技術が、地形図の読図である。私は昭文社の「山と高原地図」を持参しているが、大体の場合、これで十分である。私は独学で読図を学んだので、参考になるかは分からないが、尾根と谷の違いが読めるだけでもリスクの大きさはずいぶん変わると思う。

 ただ、この日はそのような読図スキルは必要なかった。青空はどこまでも広がり、目指す山頂はまるですぐそこにあるかのように、全てのものがはっきりと見えた。

 山頂直下には沼があり、残雪が残っている。そしてその向こう側には、トムラウシの山頂がある。三日間待ちに待った光景だ。登りは決して楽ではなかった。岩だらけで筋肉をフルに使わなければならなかった。筋肉の疲れに耐え、山頂に達すると、四方八方に絶景が広がっていた。青空と木々の緑は鮮やかな原色をしており、それが遥か彼方まで続いている。山頂では大休憩を取った。心ゆくまでこの景色を味わった。

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トムラウシ山頂直下の沼

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トムラウシ山頂からの風景

トムラウシ温泉への下山路

 トムラウシ山頂からの下山路も美しかった。巨岩と深緑と綺麗な沢が次々に現れる。また、振り返るとトムラウシの美しい山体がある。下山路を進むほど小さくなっていき、名残惜しい気分になる。

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下山路から振り返るトムラウシ

 時折短い急登をいくつか越え、やがて振り返ってもトムラウシも見えなくなる。登山道はトムラウシ温泉までの下山路に入る。長い樹木帯を進み、急登を下る。川の流れる音が聞こえてきたら国民宿舎東大雪荘まではすぐである。

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東大雪山荘

 縦走の後の温泉は格別だ。道中どんなに「きつい」「つらい」と思ったとしても、全て吹っ飛ぶ。

 温泉に浸かった後は、バスに乗り、新得駅へ下りた。このバスだが、事前に予約が必要だったらしい。運よく空き席があったので乗れたのだが、注意が必要である。

 

 大雪山~トムラウシの縦走は決して楽ではない。リスクも多々ある。しかし、普段の生活では見ることのできない絶景を数多く見ることができた。数ある山行の中でも最も印象深いものになった。下山してしばらくは、他の山では満足できないのではないかと思っていたほどだ。「登山が趣味です」と言うと、「一番良かった山は?」と良く聞かれる。そんなとき、私は間違いなく大雪山・トムラウシを挙げる。