zillagodのブログ

国内旅日記 ~自転車旅・登山・徒歩旅行~

大雪山~トムラウシ縦走登山③ 地球の上の縦走路

長大な縦走路

 2016812日、大雪山~トムラウシ縦走の2日目。鮮やかな朝焼けと共に1日が始まった。トムラウシ山までの縦走路を赤く染め上げ、一本の道が突き抜けるように伸びていた。天候は快晴で、視界のすべてが山である。登山道以外の人工物はない。北アルプスなどでは、快晴の日に麓の町が見えたりするが、ここ大雪山では人里の気配は一切ない。どこまでも緑の丘が続き、空が近い。稚拙な表現だが、「地球の上に立っている」と感じられる。とにかく日本のほかの山々とはスケールが違う。

 

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テント場の朝

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忠別岳までの縦走路

忠別岳 風光明媚な沼と穏やかな山頂

 縦走路は、白雲岳避難小屋から忠別岳・五色岳まで南北にほぼ一直線に伸びている。忠別岳までは、西側はなだらかであるが、東側は崖になっている。この崖下へ下山するルートもあるのだが、ヒグマの出没が多く、進入禁止の看板が立っている。エスケープルートとしての使用はできないと思って良いだろう。

 道は草原と湿地の中を通っている。時々ぬかるみの中を進むことになるが、概して歩きやすい路面である。忠別岳まではアップダウンはほとんどない。

 長い縦走路を4時間程歩くと、忠別沼という美しい沼が現れる。忠別岳をバックに波一つ立てずに横たわり、岸辺には高山植物が咲き誇る。その傍らの木道を歩くのだが、本当にここは日本なのだろうかと感じる。

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忠別沼と忠別岳

 忠別沼を過ぎると、忠別岳までの登りが始まる。勾配は緩く、きつくはないのだが、ここまでだいぶ長距離を歩いており、そこそこ疲労がたまっていた。

 山頂は広くなだらかで見晴らしも良い。陽光が燦々と降り注いでいる。遠くの岩の上をリスが走っているのが見えた。

五色岳から化雲岳 

 忠別岳から南を見ると、次の五色岳までの道のりが見える。一旦急坂を下り、再び急坂を登る。その鞍部には忠別岳避難小屋があり、周囲には雪渓も見える。この急坂の登りが結構堪えた。すでに山道を10キロメートル以上歩いている。なだらかな行程だからといって油断はしないほうが良い。

 五色岳の山頂はハイマツに覆われているが、人の背よりも低い。ここから縦走路は東に針路を変え、化雲岳へ向かう。しばらくはハイマツ帯だが、これを抜けると、数々の高山植物が咲き乱れる湿原の中の木道を歩く。

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五色岳山頂

 この日一日、朝からずっと素晴らしい風景が続いている。私の下手な文章力では、その素晴らしさは表現できていない。何と言えばよいのだろう。山岳写真家の写真を選りすぐって掲載している写真集の中を、ずっと歩いているような感じである。伝わっているだろうか。

ヒサゴ沼

 化雲岳から、この日のキャンプ地のヒサゴ沼までは1時間ほど下るのみである。下り坂の途中にも木道があるのだが、半分近くが湿地に飲み込まれつつある。まるで湿地が生きており、人工物が置かれることを拒んでいるかのようだ。

 ヒサゴ沼避難小屋とキャンプ指定地は、湿地の中にある。キャンプ指定地の地面は常に湿っている。おそらく雨が降れば水たまりだらけになるだろう。ここだけではない。今日の道のりは湿地が多かった。雨の日は大変歩きづらくなるだろう。先のトムラウシ集団遭難において、荒天時に体力を激しく消耗したのも頷ける。風光明媚な風景もときに牙を剥く。牙を向けられたとき、いかにして冷静で正しい判断を下せるか。登山をする者にとって、そのことは常に頭に入れておかなければならない。