zillagodのブログ

国内旅日記 ~自転車旅・登山・徒歩旅行~

襟裳岬 碧海の道路

2007年の旅

 ここで、2007年の旅について書こうと思う。この年は学生生活最後の年であった。当時、私は大学院生で、いわゆる典型的な理系学生だった。研究室に籠る日々を送り、長期の旅からは離れていたが、旅に出たくて仕方がなかった。学生最後の夏ということもあり、7日間ほど北海道に行くことにした。
 期間が短いので往復は飛行機を使った。往路は新千歳空港に降り、復路は旭川空港から戻る予定である。新千歳空港からは、南に進路を取り、襟裳岬に向かう。そこから帯広まで北上し、サイクリングサークルの合宿に合流。三国峠から層雲峡を、2004年の旅とは逆のルートで走り、上川町に降りる。そして、そこから旭川空港に向かう。

ウトナイ湖

 2007年8月22日、猛暑の関東を脱出して爽やかな北海道へ、と思っていたが、新千歳空港のターミナルから外へ出ると、関東とあまり変わらない暑さだった。日差しが強く、アスファルトには熱気が滞留していた。
 新千歳空港を出発し、国道36号線を苫小牧方面に進む。途中「ウトナイ湖」という湖沼がある。周辺は湿地帯で、いくつも沼があり、ウトナイ湖もその内の1つである。ただし、他の沼とは大きさが全く違う。水鳥を頂点とした生態系を成しており、ラムサール条約の登録湿地となっている。
 晴れの日のウトナイ湖は綺麗だった。空と水面が同じ色をしており、視界のほとんどがブルーで埋め尽くされる。岸には白鳥がいた。シベリアなどの北方に渡る際の中継地になっているという。湖畔には道の駅があり、湖を眺めながら食事ができる。さらに、2019年には展望塔もオープンしている。水面を俯瞰するアングルで、自然を観察することができる。

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ウトナイ湖

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ウトナイ湖の白鳥

太平洋岸の道路 

 苫小牧市街の手前で、国道235号線に入る。この道は、日高から海岸沿いに出て、そこから様似までずっと太平洋岸沿いを走っている。
 それにしても、この日は暑かった。日差しを遮る木々のない海岸沿いを、ずっと走っていたせいもある。しかし、この海はオホーツク沿岸とはまるで雰囲気が違っていた。海は陽光でギラギラ光り、風も湿っている。

 夕方頃、新冠に着いた。道の駅に併設された入浴施設を利用し、外に出ると、空は一面赤紫色の夕焼けだった。海岸には海水浴場があり、海水浴客が引き上げ始めていた。誰もいなくなるのを見計らって、近くにあったあずま屋で野宿をした。

 翌8月23日も快晴だった。朝は涼しかったが、日が昇るとやはり暑くなった。
 この日もひたすら海岸沿いを進む。昨日から代わり映えのしない景色がしばらく続いた。しばらく行くと、左側に高い山が見えてくる。標高810メートルのアポイ岳である。朝日をバックに神々しくそびえている。襟裳岬まで唯一の変化である。

 

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アポイ岳

襟裳岬 

 海沿いの道路は、様似から国道336号線に変わり、さらに途中から道道34号線に入り、襟裳岬に続く。襟裳岬は、今まで訪れた岬の中で、最も広大だった。北海道の中央を南北に走る日高山脈がそのまま海中に続いているようであり、その様子を高台から臨むことができる。風が強いことでも有名である。風速10メートル以上の風が吹く日が、年間260日以上もあるという。ただ、私が訪れたときは穏やかだった。
 そして、岬には風をテーマにした「風の館」という施設がある。最大風速25メートルの風の体験ができたり、「風の音」の基になる「カルマン渦」という自然現象を学べたりできる。

 

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襟裳岬

さらに太平洋岸の道

 襟裳岬からも引き続き、道道34号線を、針路を北向きに変えて走る。百人浜というのどかで雄大な渚を進んでゆく。草原と砂浜の中、遠くには日高山脈が横たわっている。晴天が非常に似合う風景だ。

 

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百人浜

 道はやがて、再び国道336号線に入る。広尾までの約30キロメートルは、「黄金道路」と呼ばれる。完成までに黄金を敷き詰められるほどの費用がかかっているという。岩礁が多く、切り開くことが困難な場所も多い。そういった場所には、現在トンネルがあるが、昔は徒歩で行き来していたらしい。想像を絶する大変な苦労だったであろう。
 そのように人を寄せ付けなかったからだろうか、風景は雄大である。道路以外に人工物はなく、海と山と岩礁と空しかない。快晴の天候の下で、それらの色は鮮やかで見事に調和している。単調で変化は少ないが、見ていて飽きない。それだけに、広尾から道が内陸に向かった際は、名残惜しくなった。

 

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黄金道路


 この日、8月23日は忠類まで走った。温泉に入り、道の駅のベンチで野宿をした。
 翌日は、内陸の畑や牧場に囲まれた道を帯広まで走った。前述の通り、ここで仲間と合流し、旭川まで走る。
 この夏の旅の最中、一度も雨に降られなかった。終始青空で暑かったが、実に気持ちが良かった。旅の終わりはいつも名残惜しい。次の年には社会人になっている。来年も旅を続けているだろうか。そんなことを思いながら、学生最後の夏の旅を振り返っていた。