zillagodのブログ

国内旅日記 ~自転車旅・登山・徒歩旅行~

宗谷岬 いつか越えたい一歩

クローバの丘

 2004828日、クッチャロ湖畔を出発する。北へ向かう前に、クッチャロ湖の西側にある、クローバの丘に登った。意外と登りがきつかったが、ここからはクッチャロ湖が一望できる。風が心地よく、晴れた丘から眺めるクッチャロ湖の風景は素晴らしいの一言である。

 午前中はここで何をするでもなく、のんびりと過ごした。

何もない地にあるもの

 この日はあまり進まなかった。特に明確な理由はない。大きな町もない最果ての地をじっくりと噛み締めたかった。都会に暮らしているとここは何もない土地に見えるかも知れない。しかし、そうではない。広大な湿原や荒々しい波を打ち立てる長大な海岸、はるか彼方からこちらを見下ろす山々など、普段見慣れないものがたくさんある(都会人はそれを何もないと言うだろうが)。ずっと都会にいると、こんな世界があることを忘れてしまう。自転車で旅をすると、そのことを文字通り身に染みて分かる。「なぜ自転車で旅をするのか」と聞かれれば、この世界を見るためと私は答える。この日は思う存分、この感覚を味わいたい気分だった。

猿払の朝日

 猿払というところで一泊をした。海に近いキャンプ場で、かつ空が広く開放感がある。夜は寒く感じたが、朝の日の出の光景は荘厳だった。

 なぜこうも朝日に魅せられるのだろうか。夜行性でない動物の多くにとって、夜は睡眠に充てられる。睡眠中は無防備だ。動物にとって、朝日とは危険に晒される一夜を終えて、再び活動を始められたという象徴なのだと思う。我々の祖先もそうだったのだろう。もはやDNAに刻まれた感覚なのだ。冷えた身体を徐々に温めて行き。その日の活力をもらう。実際には日を浴びただけではエネルギーにはならないのだが、そう思わせてくれる。

宗谷岬

 2004829日、曇り。いよいよ最北の岬、宗谷岬へ到達した。

 海の向こうは雲に覆われている。晴れていればサハリンが見えるがこの日は残念なことに見えることはなかった。荒涼とした波風が冷たいが、気分は高揚する。見えないが、確かにすぐそこに日本ではない国があるのだ。

 以前に網走で感じた感覚が再び湧き起こってきた。ここは、「最果て」の地であるほかに、外国への「入口」でもある(厳密には、宗谷岬からサハリンには渡れない。サハリンに行くには稚内から船に乗る)。あとほんのわずかの一歩を踏み出す行動力があれば、すぐに行ける。

 いつかその境界を越える日は来るだろうか。